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学術論文
『Hypersonic Effect Requisite for Health and Welfare: A Neuroeconomic Approach』Kimitoshi Sato 注1
1. Hypersonic Effect とオルゴール療法 国際ひびき生命科学研究センター 理事 佐藤公敏
都市には喧噪や騒音が溢れているが、人が不調に陥りやすい原因が明らかにされた。可聴域を超える周波数成分を持った音が基幹脳を活性することが、大橋 力教授の研究グループにより発表されたのは、1995年の神経科学世界会議のことであった。注2 Hypersonicと命名されたが、40kHz以上の髙複雑性超高周波を含む音が、人間の脳の脳幹、視床、視床下部、等に影響を及ぼすことを云う。Hypersonic Effectを発言させる条件は、1)可聴聴音は、聴覚系へ、2)超高周波を体表面へ取り組む環境が必須であり、この音環境は熱帯雨林に存在する。療法用のスイスオルゴールは熱帯雨林に匹敵する周波数を有し、既に症状の改善に貢献している。注3 人間の耳に聞こえる周波数は20Hzから20kHzである。大阪大学産業科学研究所無響室で測定したところ、オルゴールの周波数は3.75Hz の低周波から20kHzの超高周波までであった [日本オルゴール研究所所長, 佐伯吉捷氏,ならびに奥田良行氏による測定]。療法用の豊かな倍音が脳幹を刺激して体調を回復させ、血流の増加も観察された注4。 144弁か72弁の療法用オルゴールの高周波と低周波が脳幹を刺激し、聴くだけで自然治癒力が上昇し、特に以下の諸症状である癌、疼痛、リウマチ、耳鳴り、難聴、冷え症、不眠、鬱、高血圧、甲状腺疾患、不認証、婦人病、脳梗塞と事故による後遺症等の症状緩和をもたらしている。大橋氏によれば、基幹脳が活性化する作用によって、超高周波を含む音を聴くと、癌の一時防御に関わるNK細胞が増大し、免疫力が高まり、ストレスホルモンが減少することも明らかになった。更に、超高周波を含む音は、含まない音と比較して快適で美しく感じられ、より大きな音量で聴こうとする行動に人々が導かれることも観察された。CDが人の非可聴域の22kHz以上の高周波を完全にカットしているのに対し、LPは音の味わいが深まる訳である。関西大学の飯田紀彦保険所長の研究では、72弁のパッヘルベルのカノンによるオルゴール療法では交感神経の抑制が見られ、くすりのように副作用の心配の無い補完代替療法であることが明らかにされた。また、リストのラ・カンパネラも有効であると確認されている。
神経経済学(ニューロエコノミックス Neuroeconomics)は近年発展しつつある経済学の最先端分野で、神経科学を用いて研究する分野で、心理的側面から経済行動を分析する行動経済学と脳の機能を解明する神経科学の発展が研究の基礎にはある。注5 オルゴール療法が与えうる報酬は金銭的なものとは異なり、【苦痛や症状の軽減治癒】である。高価な療法用オルゴールを購入する費用と、そのオルゴールをこれから使い始めて、果たして効果があるのかという不確実な療法効果とを比較する費用対効果の判断の結果として、人が療法用オルゴールの購入を決断するか否かである。これまで長年続けてきた投薬や通院を止めて、そのためにかかる費用を療法用オルゴールの購入に振り替える人もいれば、投薬や通院のための費用を減らしてオルゴールを購入し、療法を併用する人もいる。家庭でのオルゴール療法はオルゴール以外、電気も通院も病院の待ち時間も必要としない。
医薬を止めてオルゴール療法を決断した後に、元に戻った人々の行動を、神経経済学が説明出来れば興味深い。
2 Hypersonic Effectを与えるオルゴール療法へのGorman-Lancaster-Senの理論の応用分析には以下の二つの理論を用いる。第一に《すべての財は属性(attributes)または特性(characteristics)に分解できる》
と考える、GormanとLancasterによるNew Consumer Theory 注6, 第2に,SenのCapability Theory 注7 の《機能(functioning)》、《ありよう(beings)》ならびに《幸福関数(happyness function)》の概念を用いて分析する。 療法用のオルゴールは様々なパーツに分けられ、それらの属性が相俟って、《 Hypersonic Sound (ひびき) 》を創り出す。それが functioningsである脳幹や視床下部に影響し、人のbeingを良化し、長年の病気や疼痛の緩解、鬱や不眠の解消、認知症の改善により人の幸福が高められる。日本オルゴール療法研究所ではオルゴール療法ベッドに横たわり、共鳴箱で音を増幅させて、身体の周囲で同時に複数のメロディのオルゴールを奏で、全身にオルゴールのひびきを浴びて戴く治療が行われ、長時間の演奏に耐えうる療法用のダンパーに切り替えられた特別のオルゴールを使用するが、筺体、シリンダー等すべて属性と考えられる。オルゴールのそれらの属性が創り出す新たな《音響特性》がHypersonic Effectである。スイスでは以前からオルゴール療法が普及しており、わが国でも音楽療法は実施されているが、オルゴールの音だけではなく、ひびきが健康に必すうであることが最近明らかにされた。
人は自らの時間とfunctioningsの利用により得られるbeingと、それに基づくhappinesswo生み出すものであるが、何らかの症状を持った後でも、人々は何とか幸福でありたいと願うものである。人々の《潜在能力(capability)》は症状のため変わってしまい、幾つものfunctioningsを喪失し、困難で不自由な生活に移らざるを得なくなってしまい、深い悩みに苛まれることになる場合がある。人は或る時点の事故または発病により、残存するfunctiioningsを用いて、新たなbeingとhappinessを生み出さざるを得ない。オルゴールの各属性に対する限界的評価として《限界支払意志(Marginal Willingness-to-Pay:MWP)》を持ち、財を構成するすべての属性に対するMWPの総和と価格の対比により財の利用が決定される。今や療法用オルゴールの特別な属性としてのHypersonic は、患部に密着させることにより脳幹等のfunctioningsが活性化し、beingとして更に症状の改善が得られ、happiness functionを最大化し、発病により縮小した潜在可能集合を発病以前に復帰させうる。これはSenの言う自ら生み出す幸福と言える。ザック(2018)によれば、信頼関係にある人々の内にOxytocinが分泌され、患者とオルゴール・セラピストの間にもその可能性がある。アタリ(2020)の提唱する。COVID-19パンデミック後に始まるべき新しい世界が利他的であるよう、人々のwelfare増進のため、種々の病の症状に悩む人々の辛さや苦しみをテクノロジーで解消するよう、今や我々はHypersonic Effectを用いることが可能になったのである。 注8
注1 日本経済学会秋期大会(慶應義塾大学、2022年10月15日)。Hibiki and Life Sciences International Association(HALSIA)。
注2 1995年当時の文部省大学共同利用機関、放送教育開発センター並びに、京都大学大学院 医学研究科脳病態生理学講座の共同チーム・リーダー、大橋 力教授。大橋 力(2017)、『ハイパーソニック・エフェクト』、岩波書店。Ohashi, T, E,Nishina, M.Honda,
Y. Yonekura, Y. Fuwamoto, N.Kawai, T. Maekawa, S. Nakamura, H. Fkuyama, and H. Shibasaki (2000), ”Inaudible High-Frequency Sound Affect Brain Activity: HypersonicEffect,” Journal of Neurophysiology 83.
注3 わが国でオルゴール療法を施せる病院やクリニックは、十数か所しか存在しない。療法の説明と豊富な症例は、日本オルゴール療法研究所、『オルゴール療法[症例集]』、2013、ならびに佐伯吉捷 (2020)、『オルゴール療法入門』、幻冬舎、を参照。
注4 倍音は振動数の最初の基音に対して、その整数倍の振動数を有する部分音で、例として、ピアノのハ音に伴って響くト音やホ音等がある。基音を豊かにし、和音構成の働きもある。音響学では上音。弦や管の発する楽音では、部分音の多くが倍音。
注5 Camerer,C.(2007)、”Neuroeconomics: Using Nsing Newroscience to Make EconomicPredictions,”Economic Journal, 117.Montague,P.(2007),”Neuroeconomics:A View from Neuroscience,”Functional Neurology 22.Loewenstein,G.,S.Rick ando J. Cohen (2008), “Neuroeconomics,” Annual Revie of Psychology 59. 大垣昌夫、田中沙織(2018)、『行動経済学:伝統的経済学との統合による新しい経済学を目指して』日本評論社.大晴夫雅彦 晴野雅彦、カーステン・ヘルマン=ピラート、竹内幹、若泉謙太、「神経経済学(パネル討論B)」宇井貴志他編、『現代経済学の潮流、2021年、第7章。
注6 ケルビン・ランカスター、桑原秀史訳(1989)、『消費者需要-新しいアプローチ』、千倉書房。
注7 アマルティア・セン、鈴村興太郎訳(1988)、『福祉の経済学-財と潜在能力』岩波書店。
注8 ポール・J・ザック、柴田裕之訳(2013)、『経済は「競争」では繁栄しない-信頼ホルモン「オキシトシン」が明かす愛と共感の神経経済学」』、ダイヤモンド社。ジャック・アタリ、林 昌宏訳(2020)、『命の経済~パンデミック後,新しい世界が始まる』,プレジデント社。
国際ひびき生命科学学会理事 佐藤公敏 日本経済学会秋季大会報告論文(慶応義塾大学、2022 年 10 月 15 日)