ギド・リュージュご夫妻との出会い
ギド・リュージュ夫妻と出会いがスイスオルゴールの大きな普及に!
ギド・リュージュご夫妻の自宅は、リュージュ社の道路をはさんで向かいの高台にありました。
鬱蒼と繁るモミの木の奥にモダンな家がありました。ドアを開けると、いきなりエキゾチックな、アラビア風の飾り一杯の、それは、スイスの風景にはそぐわない感じの飾りが迎えてくれました。
ギドの趣味ではない、マダムギドのご趣味であることは、しばらくして、分りました。イヤリングや洋服から受ける印象があまりに強烈で、スイスのイメージを作っていた私の不用意さを反省するのに時間が掛りながら、平静を装い、挨拶を交わしました。私の英語とギドの流暢なフランス語が交錯しました。
左手の壁に鏡があり、進んで右手に重厚な暖炉があって、その石の上にズラリとオルゴールが並んでいました。暖炉に火が入り、夕暮れ時のお部屋に灯がともると、ギドは私たち夫婦をドア横の鏡に灯を灯しました。壁の中に埋め込まれた額縁の中で2組のカップルが躍る、ルイ王朝時代の舞踏会の世界が広がったのです。
ギドのコレクションは、2階にありました。天井から吊り下げられた高価のアンティークの鳥が数知れず、圧倒されました。優れたディスクオルゴールの数々がところ狭しと押し大きなお部屋に込まれるように置かれていました。アンティークオルゴールは、ギド夫妻の永年集めたコレクションです。一通り説明が終わると、次は3階に上がりました。足の踏み場もないほどのアンティークドールのオートマタたちでした。ギド夫妻が数十年に渡って集めたオートマタを見てその質の高さと数に驚かされました。
ご夫妻とオルゴール博物館をご一緒させて頂いた思い出
小さなお城のオルゴール博物館・シャトー・ド・モンを、ギド・リュージご夫妻に案内されて、全館のオルゴールを一つ一つ館長手ずから動かし、説明して頂きました。それは見事なコレクションでした。
小さなお城のオルゴール博物館・シャトー・ド・モンの壮麗なコレクションの中で最も有名で貴重なオルゴールは、1810年に 製造された高さ20cm程の「金製の歩くおばあちゃんの像」です。
杖を突きながら金のコートを身にまとってコトコトと歩いて行く様に、王侯貴族の贅を尽くした当時が忍ばれます。
オルゴールが宝飾の世界にあって、それを確かめる上で貴重なコレクションといえましょう。2羽のハミングバードがクロックの上の草むらを散歩して歩くさまに息をのみます。スイス人時計技師ジャケ・ドローの豪華な掛け時計やヌーシャテルクロックなど、時計とオルゴールとドッキングした美術工芸の収集に驚かされます。
リュージ社のオルゴールの製造との関わり
ギドは、私にオルゴールの製造の中心部を始め、全工程を見せて説明しました。その温厚な姿勢と社員から慕われている姿を今も忘れません。老練なオルゴールの職人からピンの植え方や調律の仕方を手を取って教えて頂いた経験は貴重な体験となりました。時には、リュージ社の製造会議のような場にも出させて頂きました。私の音楽の経験からの意見も良く求められ、取り上げられました。
今も、いろいろと特注のオルゴールをお願いしていますが、当社の調整の技術の高さは、当時、ギドの思いを込めたオルゴールの質の高さを当社技術陣が持ち得ていることを誇りに思い、良質のオルゴールを日本にご提供出来ていることに感謝しています。